Abox展2025で私は追憶の林と題して真鶴半島のお林と呼ばれる照葉樹林をフィルムカメラで撮っているシリーズからの写真を展示します。
なぜ今フィルムなのか。デジタルカメラの技術発展は著しく、今ならわざわざフィルムで撮らなくても自分の表現したい画像はいくらでも作れる時代です。その一方でただの箱であったカメラは電子制御のブラックボックスと化しています。
このシリーズは300年前から真鶴の住民と密接に結びついてきた林の巨木たちを子供の頃母親に連れられてきた記憶に絡めて撮影することで、写真による時間の封じ込めを表現できたらと考えています。そのとき、出来上がった画像そのものだけでなく、時間を印画紙に封じ込める、写真撮影という行為自体も重要な意味を持つのではないでしょうか。
今回使用したカメラはローライコードという中判フィルムカメラで、発売年は1953年のIV型と呼ばれるモデルです。この時代のカメラですのでもちろん電池など使用しません。箱とレンズとぜんまい仕掛けのシャッターがあるだけです。露出計もついていませんが、使用した単体露出計も当時の電池を使わない光発電素子タイプです。
このカメラでフィルムに露光した像を現像作業で目に見える形にします。遮光タンクの中で現像液、停止液、定着液と反応させることでネガフィルム像が現れます。
最後は印画紙への焼き付け。これもアナログで行いました。引き伸ばし機の光源から印画紙にネガフィルム像を投射し、適切な時間露光します。あとは印画紙をバットに入った現像液、停止液、定着液と反応させ、プリントを完成させるのです。
これらの工程を自分で行うことは、少なくともこのシリーズを作る上では必須だったのではないかと考えています。
是非、生のプリントを見にいらしてください。

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